♯5:新製品発売後のリスクはコピー対策、安全、改善、意外と多い!?

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当ブログでは開発マンが商品が生まれる裏側を紹介しています。当サイトを見られている方から見れば不良品や初期不良という見方になりますが、今回は開発マンサイドの視点で新製品発売後のリスクとして紹介します。

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新製品発売のプロセスとは

そもそも新製品発売のプロセスには

設計、試作、検証、改善、量産、品質確認・検査、出荷

ざっくりと、このような流れとなっています。

このプロセスの中でも最も時間が掛かるのが 設計、施策、検証、品質確認となります。

まずは要求仕様(製品にとって必要な性能など)の洗い出しを行い、これらの要求仕様を満たすべく製品の設計を行います。

例えば、”安価”という要求仕様があれば、材質は極力、プラスチック(樹脂)を使用します。

更に、安価という言い方をすればPP(ポリプロピレン)を選定することが多いです。

これらは一般的にプラスチックと呼ばれるものですが、中には割れにくいとか、磨耗しにくいとかそういった要求があればエンジニアリングプラスチックと呼ばれるPA66やPOMなど、それぞれの特性にあわせた樹脂を選定し設計を行なっていきます。

基本的に、樹脂製品というのは成形品が多いです。

成形品とは、金属製の金型と呼ばれる凹型にプラスチックを溶かして流し込み、その形状を作り上げます。

この製造方法のメリットとしては、金型は比較的高額ですが樹脂は1kgあたり〇〇円といったのが大体の相場なので、比較的安価に製造出来ます。

デフレが進んでいる今の日本でものを売るには、ここでいかに特徴的な形状を新たに生み出し、ただ溶けて形を変えることができるとうだけのプラスチックに新たな役割を作り出すかが重要となります。

ただ、いくら画期的なものを生み出しても基本的にはすぐにコピー品が生まれ、更には安価で売られるというリスクが存在します。

これらから新製品を守るのが”知的財産権による保護”となります。

知的財産権による保護

皆様も聞かれたことがあると思いますが

・特許権

・意匠権

・実用新案権

これら3つがメインとなります。

特許権というのは、皆様もよく聞かれたことがあるとお思いますが機能的に革新的で新しいものを保護します。

筆者も数件の特許がありますが、それら少しの工夫で大きく性能を飛躍的に伸ばすものたちです。

簡単で他社が真似をしやすいからこそ、敢えて特許という形で保護しました。

特許取得のざっくり

この特許権を取るには、

・特許文案作成

・弁理士相談

・出願、審査請求

・特許公報(登録)

となります。もちろん、この中で審査請求をした結果、”ここは問題ですよ”みたいな意見が審査官から来ることもあるので、この際は”意見書”を添えて特許の請求項(内容とか特許が抑える範囲)などを適宜修正し、晴れて特許取得となります。

特許情報は誰でも見ることが出来る

日常生活をしていると関わることは少ないと思いますが、特許庁のHPでは各知的財産権は誰でも見れるようになっていますので気になる方は是非一度見て見てくだダサい。

特許情報プラットフォーム

筆者の場合、自信を無くした時に自分の名前で検索し、ちょっと元気になったりしています。(笑)

他には、新製品を設計する際に他社がすでに知的財産権による保護を行なっていないか調査を行なったり、時には構造の参考とするために他社の特許内容を見たりしています。

検索方法は

・特許概要

・発明者名

・会社名

などで検索出来ますので、自分の製品を調べてみることも出来ます。

これらが特許権となりまして、取得難易度からいうと最も高いものとなります。

特許より弱いが便利な実用新案とは

逆に、簡単に取れるのが実用新案権。

皆様も製品を買われる際、商品パッケージに”実用新案取得済み”とか”特許申請中”とか見たことあると思いますが、いわゆるそれと同じものです。

実用新案権とはに関しては特許庁HPなどで詳しく載っていますので割愛しますが、ざっくりいうと新しいアイデアなどを守るものです。

特許のように革新性が無くても、これは申請するだけで取得できるとういうか、特許と違いさほど審査がないので比較的に簡単に取得可能です。

よって、商品パッケージに載っていたのしても

”特許取得済み”と”実用新案取得済み”では雲泥の差があるといっても過言ではありません。

しかしながら一般消費者はそこまで気にはしていないので、PR(プロモーション)の一環として実用新案権を申請することもあります。

このプロモーションの一環としてってのが重要で、自分たちの製品を守るというよりも、宣伝する意味合いが強いのが実用新案権です。

とはいえ、特許を取得するよりも安価で取得できたり、後に他社が自分の製品と同じ構造で特許を取得する可能性もあります。

実用新案権として申請しておくことで

”現時点で、既に考えてますよ”ということは国お墨付きで残せますので、発売後他社が同じものを考えた際に「貴社の製品は特許権を侵害している」などの疑いからは回避できます。

実用新案権、特許権を取得する目的とは

基本的には先に考えた人の権利となるので、一応ペラペラの防御壁としては役に立ちます。

ということで、新製品発売後のリスクとして挙げられるコピー品の防止や、逆に発売予定の商品が他社の特許権を侵害していないかの確認の意味も含めて特許出願を行います。

基本的に審査官が審査を行なってくれますので、思いついた新たな構造を他社(者)が既に考えついて申請されている場合などは、

「登録できませんよ、〇〇が既に抑えていて、ここの文ですよ」

みたいな形などで教えて貰えるので、新製品発売後のリスクを知るという意味でも特許出願は非常に有効な方法の一つだと言えます。

弁理士事務所に競合品や知的財産権調査を依頼すると数万円から十数万円掛かることも多いで、であればいっそ特許出願するのも手だと思います。

不良品というリスク

当然、出荷に至っては検品(商品の問題が無いかを確認する検査)が必要不可欠となります。

ある程度、流れ始めた商品に掛かっては数個から数十個に1個といったように、抜き取り検査が基本となりますが、新商品の場合はどういった不良が出るかわからないため、基本的には全数検品を行います。

工場から入荷した製品を全て一つ一つ検査をします。

性能検査、外観検査、これらが主に確認する項目ですが、初めて送り出す製品たちのため、何があるかわからないので、これ以外も人間の目と手を用いて一つ一つ検査を行います。

中にはバリと呼ばれる成形不良というか、鋭い断面が商品にあることもあり、これらを見逃すとせっかく購入してくださったお客様が怪我をするという最悪の事態に陥ります

このようなことが内容に、一つ一つ丁寧に見ていきます。

メーカー製は信頼が置ける!?

それでも初期不良や不具合というのは多かれ少なかれ発生します。

Amazonなどが台頭し、我々メーカーのように品質保証部門や検品を行わない代わりに、工場が作っている既存品をそのまま仕入れ、安く売っている人たちも多くなってきました。

それらと比べると我々メーカー商品というのは当然、色々な安全を保証するためのコストが乗っかる為、価格も高くなります。

よく、「〇〇さんのとこの商品は高い、アマゾンやと似たのが〇〇円で買える」などと言われることもありますが、それらの製品は基本的に検査や品質保証をしていないということを分かった上で購入頂ければと思います。

最悪、火事になることも

特に電子部品や自動車に装着する部品がインターネットで安い傾向にありますが、数百円・数千円の差で最悪、車が燃える可能性もあるというリスクを承知の上で買うのであれば賢い買い物だと思います。

我々メーカーも最新の注意を払い、商品を世に送り出すわけです。

単なる光り物に関しても逆接続保護回路や自己復帰ヒューズなどの安全回路を組み込んで設計を行いますが安価なものにはこれらが無いので、すぐに壊れたり最悪ショートのリスクなどもあります。

我々メーカーの設計者にとっては、コストが上がってでもお客様の安全を担保するというのは非常に重要な事で、価格が上がってでも安全の追求というのには終わりがありません。

それでも時には想定しないことが起こり得ます。部品供給となると、組み合わせによって想定外のことが起こりうることもあります。

時には発火まではいなくても熱を持って溶けてしまいお客様が火傷することも。

こういったことも新商品発売後のリスクといえます。完全にゼロにすることは出来ないまたはオーバースペックとなるので、適切ではありません。

本来はこのグレードの部品で行けるのに、安全を過度に追求するがあまり商品の売価が極端に高くなっても一般消費者にとっては買えなくなります。

メーカーの強みとは

この辺りの絶妙な線を探るのもの我々メーカー開発マンの腕の見せ所でしょうか。

数十年と新商品を生み出し続ける中で多くの失敗(不具合、事故)なども経験し、それらの情報を蓄積することで、より良い商品を生み出す。

この長い経験の蓄積こそ、我々メーカーの強みの真髄であるとも言えるのでは無いでしょうか。

こういった新製品発売後の不良品や誤動作なども、新製品発売後のリスクの一つと言えるでしょう。

商品を世の中に生み出すに長いプロセスがかかります。

そして最善を模索し続け、商品は世の中に誕生します。

ただ、長い道のりを経て商品を発売しても、それはゴールではありません。

お客様からの意見やクレームを収集し、さらに商品の改善を行います。

そうして発売後も出したままでいるのではなく、しっかりとフォローを行う。

そうしてお客様と共により良い商品を生み出す形が真の理想形と言えます。

EOK(End Of Life)とは

とは言え、実際にフォローできない商品もあり、それらはEOLを迎えます。

長いものは数十年と残りますが、短いものは僅か数年で終わることもあります。

EOLとは、Emd Of Lifeの略で日本語でいうと製造打ち切りや販売終了です

悲しさもありますが、数年に渡って誰かの役に立ち、活躍してきたことを嬉しく思ったり、感慨深くなったり。

数年前に筆者が担当し生まれた製品たちも早いものは、そろそろ最期が近づいてきているものもあります。

Amazonレビューなどを見ていると抜群に良いのですが、売価やプロモーションなど色々な要因が重なり合って、当初考えたほどの数量が伸びていない商品。

例えどれだけ良い商品でも売れないと終了です。

あとがき

そこそこ売れてる程度であれば、その売り場の他の商品を置いた方がよっぽど利益となることや、我々メーカーにも製造ロットというものが存在します。

例えば年間に売れる数量が10,000個で製造ロットが10,000個だとしましょうか。

これだと回転数は年1で月に直すと1/12となります。

名言は避けますが倉庫にも月次回転数の基準というものがあって、これらを下回るとEOL候補となってきます。

ここからはメーカーごとの基準やノウハウがあるので詳細は話せませんが新製品が生まれて、そこから様々なリスクが存在し、やがて死んでいくと。

この間のみ一般消費者が商品を購入する機会を得ることができ、ただ買うだけでもこれは奇跡的なことなのだと我々開発マンは思っていたり。

だからこそ、少しでも喜んでもらえるように知恵を出し合い、とことん検討し、商品たちを生み出していきます。

少し長くなりましたが、最後までお読みいただき、ありがとうございました。

アディオス!

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